ジュリアロングボトム大使閣下、英国から来日されたDrax社幹部の皆様そしてご来賓の皆様、今晩は。

私は一般社団法人日英協会理事長の塚本と申します。ご来賓の方々が大勢おられる中で甚だ僭越ではございますが、ご指名でございますので乾杯の音頭を取らせていただきます。

はじめに、このたびDrax社がアジア現地法人を日本に設立されましたことに対し、心よりお祝いを申し上げます。バイオマス発電のリーダーであるDrax社が日本での事業展開を本格化させるために進出されたことは、わが国にとっても大変意義深いことであります。二つの観点から申し上げます。

第一に、わが国はエネルギー基本計画において2050年カーボンニュートラルの実現を目指していますが、Drax社の日本進出は、再生可能エネルギーの利用促進を加速させる起爆剤となることが期待されます。ベースロード電源として大切な原子力発電については再稼働がなかなか進んでいない中で、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの果たす役割が自ずと高まっています。その有力な選択肢の一つであるバイオマス発電についても、さらなる供給拡大が望まれますが、この分野のリーダーとして実績を上げてこられたDrax社の技術と経験が本格的に導入され、わが国のエネルギー転換がいっそう促進されることを期待いたすものであります。

第二に、今回の日本進出は日英関係の更なる進化にとっても非常に重要な礎になるのではないか、と思っています。大使のお話にもありましたように英国企業が日本に進出する例は少なくなっています。しかし近年、日本と英国は経済や文化のみならず安全保障の分野等においても、新たなアライアンスを構築してきており、今また再生エネルギーという国家戦略上極めて重要な分野で英国を代表する企業が日本で一歩を踏み出されることは、日英関係が新たな領域で絆を深めることにつながるものとして大いに期待されるところであります。しばしば日英両国は、自由、民主主義、法の支配、言論の自由といった共通の価値観を有する友好国だと言われます。しかし私は、共通の価値観を有する国は他にもありますが、日英関係を他の二国間関係から際立たせるのは、両国の国家間、そして国民の間に長い交流の歴史を通じて築き上げてきた信頼関係があるからではないかと考えております。良好な人間関係を結ぶためには、価値観の共有に加え、さらに彼我の違いも理解し合える信頼関係こそが大切であるように、国家間においても互いの立場の違いを深く理解し合った上で相互にリスペクトしあえる関係が重要であると考えますが、日英関係は、このような意味において、相互の信頼とリスペクトに基づく稀有な二国間関係であると申せましょう。

前イングランド銀行総裁であり現在国連の気候変動問題担当特使であるマーク・カーニー氏は、かつて「時間軸の悲劇の打破―Breaking the Tragedy of the Horizon」と題する有名な講演を行い、世界に対し気候変動問題への警鐘を鳴らしました。 「時間軸の悲劇」とは、気候に関連するリスクは数十年のスパンで企業活動に影響を及ぼすことになるため、顕在化した時には手遅れになる、というものです。そしてこのリスクを軽減するために、彼が提唱したTCFDは今、世界の潮流となっていることは皆さまご存知のとおりであります。

わが国のエネルギー問題は様々な構造的問題を抱えおり、多様な課題を解きほぐすのは容易ではありません。しかし今、Drax社という英国のパートナーを得て、わが国におけるエネルギー戦略の実現に向けて、新たな地平が切り開かれることを、お集まりの皆様とともに、大いに期待したいと思います。

それでは乾杯に移らせていただきます。

大使閣下、ご来賓の皆様、ここにお集まりのすべての皆様、日本におけるDrax社の門出をお祝いし、今後のご発展を祈念するとともに、お集りの皆様の今後ますますのご活躍とご健勝をお祈りして、乾杯したいと存じます。 ご唱和ください。乾杯